難治性傷病
むち打ち損傷(外傷性頸部症候群・頸部捻挫・頸部挫傷)
現在では,むちうち損傷という病名は使われず,外傷性頸部症候群・頸部(頸椎)捻挫・頸部(頚椎)挫傷と呼ぶことが一般的です。
追突事故等の頚椎の後方への過伸展とそれに続く前方への過屈曲及び,場合によっては回旋強制外力によって,頚椎椎間板や椎間関節・関節包,周囲の靭帯・筋肉・神経などの軟部組織の損傷が引き起こされ,項頚部痛を主症状とする病態,また交通事故だけでなく身体に外部からの強い衝撃やスキーやスノーボードという様なスポーツでも「むち打ち症」になる可能性があります。
■分類
ケベック鞭打ち症関連障害(whiplash associated disorders:WAD)特別調査団による研究
Grade 0:頸部痛なし
Grade 1:頸部痛のみ
Grade 2:頸部痛+頚椎運動制限・圧痛あり
Grade 3:頸部痛+神経学的所見(筋力低下・知覚障害・腱反射喪失)あり
Grade 4:頸部痛+骨折・脱臼あり
*めまい・耳鳴り・頭痛などはどのGradeにも表れ得る。
日本に深く根付いている「鞭打ち症」に関する考えは,大半は1~3ヶ月,少なくとも半年間で治ると考えられています。
それ以上かかる慢性的な「鞭打ち症」に関しては,残念なことですが,精神的なものとされるケースが多いようです。
しかし,近年ではこの慢性的な「鞭打ち症」と低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とのかかわりも指摘されています。
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)とは,交通事故による鞭打ち症やスポーツ外傷などにより髄液が漏れ,髄液圧が低下するために種々の症状が現われる障害です。
髄液の産生が少なくなったり,漏れる量が多くなると髄液量が少なくなり脳や脊髄が下がります。
髄液は,脳・脊髄を保護するクッションの働きをしています。漏れやすい場所は,頚胸椎移行部あたりが多いようです。
■症状
めまい・頭痛・はきけ・厳しい倦怠感・脱力・集中力,思考力,記憶力の低下・視力障害・首がしめつけられた感じ・後頭部から首にかけての鈍痛・常に首が凝った状態・背中の痛み・あごの違和感・のどの痛みなどといった,まさに様々な症状が現われるようです。
■施術
硬膜外自家血注入(通称ブラッドパッチ)など専門医の受診が必要です。
バレーリュー症候群
バレーリュー症候群とは,頸部交感神経の過緊張によって生ずるといわれています。
脳幹障害説・椎骨動脈不全説等諸説有ります。
激しく動いた後,症状が増強される傾向が多いようです。
症状は,後頭部痛・頭痛・めまい・耳鳴り・首の痛み,違和感・視障害など様々な自律神経症状が出現します。
簡単に言えば,鞭打ちによって起こる自律神経失調症といったところでしょうか。
CRPS-TYPEⅠ
以前はRSDという用語が使われていました。
骨折・捻挫・打撲などの外傷をきっかけとして慢性的な痛みと浮腫・皮膚温の異常,発汗異常などの症状を伴う難治性の慢性疼痛症候群。
明確な神経損傷なしに発症する。
従来の身体に何らかの異常がある為に起きる「正しい痛み」とは違い,何の異常も無いところに脳と神経の誤作動によって生み出される理不尽な痛み,その為「精神的なものだろう」と思われがち。
簡単に言えば,神経や軟部組織への外傷から通常の治癒過程をたどらない疾患。
■痛みの発生
1.始めの損傷が感覚神経と介して中枢神経に伝播する痛みのインパルスを発生させます。
2.痛みのインパルスはやがて,もとの損傷部位に戻る交感神経のインパルスの引き金になります。
3.交感神経インパルスが炎症反応を引き起こし,血管が攣縮して腫脹や疼痛の増大につながります。
4.疼痛が他の反応を誘発して疼痛と腫脹のサイクルが出来上がります。
■症状
・刺激を起こしている損傷とは不釣合いな激しい疼痛
・ハリで刺すような痛み
・疼痛性刺激に対する過剰反応
・通常なら疼痛を起こさない刺激に反応した痛覚
・皮膚萎縮(光沢・乾燥・鱗状)
・多汗症
・浮腫
・運動制限
・こわばり
・皮膚温異常
・筋萎縮 等々