リトルリーガーズショルダー 野球肩 上腕骨近位骨端線損傷
執筆者 院長 山本幸治
投球障害において小学生から中学生にかけては、肩よりも肘が悪くなることが多いですが、この年代で肩の痛みを呈した場合、ほとんどはこれ(リトルリーガーズショルダー)であることが多いです。
リトルリーグショルダーとかリトルリーグ肩とも呼ばれたりもします。
成長期にはまだ骨の端っこに骨が伸びるための成長線が残っています。
高強度の投球や繰り返しの投球によって、この脆弱な成長線に捻転力や離開力が加わり損傷されてしまいます。
上腕骨近位骨端線離開とも呼ばれますが、完全に離開していなくとも痛みを呈していることは多々あるため、あえて上腕骨近位骨端線損傷と呼ばせていただきます。
画像検査でのファーストチョイスはレントゲンになりますが、レントゲンで左右を比較し明らかに離開していれば診断もはっきりしますが、前述の通り明らかな離開が認められないこともしばしば見受けられ、診断がはっきりしない場合も多いです。
しかし、この年代で他の投球障害である腱板や関節唇損傷を起こすことは稀で、小学生、中学生で投球時に肩の痛みを訴えた場合、高い確率でリトルリーガーズショルダーであると考えることができます。
多くは体の成長に見合っていない強度での投球や投げ過ぎによってなってくるものです。
経験的には、痩せて骨の細い子がなりやすい傾向がみられます。
負荷が体格に見合ってないのですね。
Freisig(1995)らは一球投げる毎に肘への外反ストレスは大人で64Nm、子どもで27Nm、肩では67Nmかかるとしています。
重さにしてボール150球分ですね。
超音波エコーもこの骨端線の損傷を判断するのに有用です。
レントゲンで異常はみられない場合でも、エコーで異常が描出されることもしばしばあったりします。
図1は正常な上腕骨近位骨端線部のエコー画像です。
(図1)
図2は骨端線部での骨ラインの不整がみられること分かるでしょうか?
(図2)
また別の重要な指針としては当該部位の圧痛があります。
レントゲンやエコー画像上でも明らかな問題がみられない場合でも、限局的に圧痛が存在すれば、同部位に何らかのダメージを受けていることが推察されます。
また同様に肩の外転外旋での抵抗テストなども重要なサインとなります。
治療としては、基本的には骨が悪くなるわけですから、局所の安静、いわゆるノースローにして骨が正常な成長ラインに戻ってくるのを助けてあげる必要があります。
この肩の痛みは最初は投げて投げれない痛みではないため、知らず知らずのうちに悪化させてしまいます。
骨端線が悪くなり、投げていて自然に治ってくることもありません。
投げていればドンドン悪化してくるばかりで、痛みでどうしようもなくなった時には投球中止期間も非常に長く取らざるを得なくなり、かえって復帰は遅くなってしまいます。
しかし適切に投球を中止し正常な成長ラインに戻してあげれば予後は良好です。
問題なく野球ができるようになります。
そして大切になってくるのは肩を中心とした体のコンディショニングです。
野球は片側性のスポーツです。
投球側は往々にして関節、筋肉が硬くなってきます。
さらに成長期は一時的に体が硬くなってくる時期でもあります。
肩に限らず、股関節の柔軟性の欠如や体幹の機能低下がリトルリーガーズショルダーを惹起するのです。
当院では適切な期間の投球制限とともに体のコンディショニング維持や改善を治療の主眼としております。
【参考文献】
Freisig GS, Andrews JR, Dillman CJ, et al. Kinetics of baseball pitching with implications about injury mechanisms. Am J sports med.
1995;23:233-239.
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