四十肩、五十肩の炎症期にやるべきこと

四十肩・五十肩

執筆者:

                

 

エコー

 前回は画像診断装置の発達により今までわからなかった肩の痛みを烏口突起炎、上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、腱板炎、石灰沈着性腱板炎など様々な病態に分けて診断できるようになってきたと説明しました。

 

 

 しかし、それでもなおはっきりとした原因が分からない四十肩、五十肩に悩む人が多くいます。

 

 

 ほとんどの四十肩、五十肩は炎症期→拘縮期→回復期といった経過を辿り治癒に向かいますが、今回は「炎症期」にやるべきことを説明します。

 

 

 

 

炎症期に何をすればいい?

 

 肩の痛みで悩んでいると動かしたほうがいいと言われたり、動かさないほうがいいと言われたり…どうしていいのかわからないという声をよく耳にします。

 

 

 これは病期によって対処法が異なるためであり、状況によりやるべきことが変わるからです。

 

 

 炎症期のほとんどの方が口にされるのが

・少し動かそうとしただけでも強い痛みがある…

・寝ようとしても痛みが強くて寝れない…

・洗濯物が干せない、高い場所のものが取れない、下着をつけられないなど日常生活で不自由なことが多く、ストレスがたまる…

など

 

 

 普段は何でもないようなちょっとしたことでも強い痛みが出ると、ストレスから心の余裕もなくなってしまいますよね。

 

 

 しかし、何もしないより少しでも動かすほうが改善が早くなったり、痛みをコントロールできるということがわかっています。

 

 

 

 

炎症期に推奨されていること

 

 患者さん自身が肩の状況と痛みを正しく理解すること、そして痛みを伴わない範囲での関節可動域練習や運動療法、家でのセルフケアが効果的と言われています。

 

 

 何もわからないままだといつ痛みが消えるのか先が見えず、不安ばかりが大きくなることもありますよね。

 

 

 大切なことは現在の状況を理解して、今後どのように痛みが変化するのか知ること。そして治療とともにできる範囲の運動やストレッチを行うことです。

 

 

 

 

痛みが強すぎて何もできないという方

 

 肩の痛みが長く続いている方は神経が敏感になることで、わずかな刺激も激痛に感じてしまう状態になっている可能性があります。これを末梢性・中枢性神経感作*といいます。

 

(*中枢性感作とは、脳や末梢神経が痛みに敏感になっている状態。つまり通常では痛みを感じないような僅かな刺激でも痛みを感じてしまう状態。)

 

 

 このような状態の方は関節を動かすなんて考えられないと思うかもしれませんが、こんな場合でも運動療法、全身運動が効果的である(EIH)と多く報告されています。

 

 

※Exercise-induced-hypoalgesia(EIH)

“運動中または運動後に侵害刺激に対する痛覚閾値・耐性値の増加、または痛覚強度の減少を特徴とし、痛覚感受性が減弱する現象”

(松原貴子:EIHについて:ペインリハビリテーションの観点から.ペインクリニック 38 : 601-608,2017.)

(松原貴子: 運動による疼痛抑制の神経メカニズム.ペインクリニック 35 : 16555-1661,2014.)

 

 

 またEIHに関して

罹患部と離れた遠隔部での運動においても罹患部の痛覚感受性を低下させることも知られています。

 

 

 具体的な運動療法としては、肩関節を動かさずに肩の近くの肘や肩甲骨、胸椎から動かし始めます。

 

 

 肩関節を無理に動かしてしまうと炎症が強くなり、更に神経も過敏になってしまうため必要以上に焦らず状況を見ながら運動療法を行うのです。

 

 

 更に、肩周囲から遠く離れた場所の運動でも痛覚感受性を低下させることも報告されているため、肩が動かせないような強い炎症期でもウォーキングやエアロバイクなど、患部に影響の少ない場所の運動を行うことで痛みを軽減できる効果があると考えられます。

 

 

エコー

 

 

 未だに著効を示す治療法はありませんが今回紹介した方法で痛みを理解してコントロールし、根気よく治療していくことが今できる最善の方法と考えています。

                 

                                                                                     

 当院では超音波エコーで肩の状態を確認し、手技療法や運動療法に加え、電療、超音波治療、体外衝撃波などを状況に合わせて行い、多角的にアプローチしています。肩の痛みでお悩みの方は一度ご相談ください。

 

 

エコー

エコー

 

 

 最後に家でできるストレッチをご紹介します。無理のない程度にやってみて下さいね。

 

 

 

 

 四つ這いで手を床につけ肩を安定させます。

 

 

 手と膝を床につけたまま体を少しずつ前後させ、肩をゆっくり動かすようにします。(可能ならハイハイもおすすめです)

 

エコー

エコー

 

 

 無理に大きく動かさず、痛みの出ない範囲で動いてみてください。

 

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