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野球肩とは
執筆者:院長 山本幸治
執筆者 院長 山本幸治
野球、特に投球時に痛む肩のことを総称して野球肩と呼びます。
投球時に特有であることから投球障害肩とも呼ばれます。
一言に野球肩といっても、その原因や病態は多岐に渡ります。
2. 腱板損傷
3. インピンジメント症候群
4. SLAP損傷
5. 肩甲上神経障害
6. ルーズショルダー
7. ベネット(Bennett)損傷
等々
これらの病態は肩が壊れた状態でありますが、多くはそれ以前に肩が壊れる原因があることがほとんどです。
それを解消しないと肩は治らないわけです。
次回より、これらの詳細について述べていきたいと思います。
県立岐阜商業高校テニス部トレーナー活動
執筆者: 門野隆顕
執筆者 門野 隆顕
当院では県立岐阜商業高校テニス部のトレーナー活動を行っております。
主にコンディショニングのサポートを行っていますが、定期的に体組成計測定やテニス選手専用のフィジカルテストを行い身体の変化なども追っています。
またスイングスピードやサーブの威力と相関があるとされる除脂肪指数をテニス部のメンバー内で共有し、全員の数値の変化を比べ、それぞれの身体と向き合ってもらっています。
筋肉量が少ない選手、筋肉はあるのにうまく能力を使えていない選手、テニスのスキルや身体操作がうまくできない選手など、選手により必要なトレーニングが異なります。
データを元にそれぞれ適切なトレーニングを行い、よりパフォーマンスアップできるようサポートしています。
〈8の字鬼ごっこ〉
ドロップステップ、クロスオーバーステップトレーニング
〈棒避け〉
テイクバックを早く作るトレーニング
〈ブルガリアンスクワットジャンプ〉
筋パワートレーニング
当院ではパーソナルトレーニングも行っています。 パフォーマンスを上げたい方はもちろん、ダイエットや痛みの出ない体にしたいなど、それぞれの状態に合わせて運動を行っています。
興味のある方はヤマモト整骨院までお問い合わせください。
四十肩、五十肩は関節に何は起こっている?
執筆者:
近年では画像診断の発達により病態を診断できるものが増えましたが、それでも痛みの原因がはっきりしないものも多くあります。
今回はその“原因がはっきりしない四十肩、五十肩”について現時点の研究で分かっていることを説明したいと思います。
四十肩、五十肩になると肩が動かせない、上がらないなど正常な範囲で動かなくなってしまいますよね。この状態のことを「拘縮」といい、これは主に“関節包”という場所に起こります。
肩関節を覆っている関節包が拘縮すれば、当然肩の動きが悪くなってしまいます。
また関節包以外にも関節を覆っている烏口上腕靭帯や腱板疎部という場所があり、ここにも病変が起こりやすく、ここの動きを制限されると特に腕を外側に捻る外旋という動きで痛みが強くなり動かすことが出来なくなってきます。
(Thanks Complete Anatomy)
発症初期にはこの部位に血管新生や炎症反応、細胞接着などの病変が見られ、コルチゾル注射を行うと効果が高いと報告されています。
また手術を選択した際はここを切離することもある程くらい四十肩、五十肩と関わりが深い場所です。
しかし、発生機序については他にもさまざまな説があり、最新のエビデンスにおいてもなぜこのような場所に拘縮が起こるのか正確な原因はわかっていません。
それでも今現在の研究により考えられるいくつかの説を紹介します。
・機械的ストレス
普段の動きの中で身体にストレスを与えると細胞が傷つきます。ある程度は修復されますが、限度を超えると変性を起こすと言われています。
この変性は「線維芽細胞」という伸縮性のない細胞から「筋線維芽細胞」という収縮する細胞に変わることで過度に縮んでしまい、可動域制限や拘縮につながると考えられています。
・細胞外基質(マトリックス)の周期回転異常
先ほど解説した線維芽細胞は細胞外基質のコラーゲンというものを生成します。
このコラーゲン生成の周期はMatrix Metallo Proteinases (MMPs)とTissue Inhibitor of Metallo Proteinases (TIMPs)という酵素によって管理されています。
MMPsは簡単に言うと余分なコラーゲンを溶かす役割で、TIMPsはMMPsの働きを抑制する役割を担っています。つまりこの二つの酵素がバランスを取りあうことでコラーゲンの生成、恒常性を保っています。
しかし、何らかの原因により二つの酵素のバランスが崩れるとコラーゲンの線維化を進行させるとされています。そして、徐々に関節包が拘縮していくことに繋がります。
・低程度の慢性炎症
四十肩、五十肩の患者の関節包では細胞の接着分子であるICAM-1やリポ蛋白(α)というものの数値が高くなることが確認されており、低程度の慢性炎症に関わる化学物質が線維芽細胞を筋線維芽細胞に変性するトリガーになると考えられています。
そして慢性炎症と関わりが深い糖尿病や甲状腺疾患を持っている人は四十肩、五十肩の生涯発症率が非常に高くなります。そのデータとして一般人の四十肩、五十肩の生涯発症率は2-5%ですが、糖尿病患者では10-30%にまで上昇します。
さらに糖尿病患者では加齢や高血糖に伴って病変を誘発する化合物(AGES)が活発になり、これに伴い前述したTIMPsの働きを抑制し細胞外基質のサイクルにも悪影響をもたらします。
そのため糖尿病患者の予後は不良になります。
このように痛みが出ている場所だけを治療していてもよくならない場合があることはわかっていただけたと思います。
四十肩、五十肩の発生機序はシンプルではなく複雑です。そして、未だに全て解明されていません。
糖尿病のリスクとなりうるような乱れたライフスタイルは身体の恒常性に影響を及ぼし、慢性炎症のトリガーになる可能性があります。
身体が慢性炎症状態であれば肩の治療をしたとしても痛みが取れづらい可能性があります。
そのため当院では肩の治療はもちろん、運動療法や栄養療法で痛みを強くしている様々な因子に対してトータルで治療を行い、痛みを改善できるよう様々なアプローチで治療を行います。
現時点で言えることは慢性炎症が発生機序、または疾患の進行に関わっている可能性が高いということです。
そのため、単なる肩関節の拘縮と捉えるのではなく、他に生活習慣なども関わってくることを認識していくことが大切になりそうですね。
【参考文献】
T Kraal, J Lübbers, M P J van den Bekerom, J Alessie, Y van Kooyk, D Eygendaal, R C T Koorevaar. The puzzling pathophysiology of frozen shoulders – a scoping review. J Exp Orthop. 2020 Nov 18;7(1):91.
胸郭出口症候群(TOS)と野球
執筆者:院長 山本幸治
執筆者 山本幸治
胸郭出口症候群(以下TOS)は前頚部や前胸部などで上肢に行く神経や血管が圧迫され、肩や腕、手などの痛みや痺れ、動かしにくさなどを引き起こす疾患です。
(Sportsmedicine, 2013より)
手を高く上げて行う動作などを繰り返し行う場合に発症しやすく、やせ型でなで肩の女性に多いとされていましたが、最近ではオーバーヘッド動作を行うスポーツ選手にも多く発症することが分かってきています。
特に野球の投手などは繰り返しの投球動作により発症しやすく、TOSとなるのはプロ野球レベルの選手に限った話では全然ありません。
小学生などでも体が未成熟であるがゆえにTOS症状を発症するものは多く見受けられます。しかし子どもの場合は自分の症状を大人に伝えることが上手でなく、多くは「気持ちの問題」とか「根性が足りない」などといわれ、放置もしくは見逃されてしまっていることも多いと思われます。
ご自身、お子様にこのようなことはないでしょうか?
・試合最初は調子よかったが急にコントロールが乱れ始める
・利き手なのに非利き手より握力が弱い
・腕を上げているとすぐにダルくなってくる
・野球肘と言われたが投球中止にしていても一向に治らない
・昨日は肩、今日は肘、その前は前腕部と脈絡なく腕全体が痛くなったりする
・ボールをポロっと落としてしまう
・数球投げ急に力が入らなくなる
・ランニングしていると手がしびれてくる
等々
徒手的な検査はライトテストやRoosテストです。
TOSには、圧迫タイプや牽引タイプ、もたそれらの混在した混合タイプがありますが、前述したとおり見逃されやすい疾患でもあり、病状を丁寧に聞いたうえでTOSを疑って検査、判断していくことが大切になります。
正確に診断するためにはCTや血管造影など専門医での検査が必要になりますが、初期スクリーニングとしては超音波エコーも有用な手段の一つとなります。
当院でもTOSの判断にエコーを使用しておりましたが、先般、慶友スポーツ医学センターのセンター長であられる古島弘三医師のセミナーを拝聴させていただき、更なる知見を学ばさせていただきました。
【鎖骨下動脈の収縮期最大血流速度 PSV(Peak Systolic Velocity)】
ドップラーエコーにて
・下垂位
・90°外転位
・最大挙上位
で血流速度を測定し比較します。
上肢を挙上するほど血流速度は低下します。(注:軽度の狭窄では上昇する例もある)
【前・中斜角筋間距離 ISD(Inter scalene distance)】
神経血管束が通過する前・中斜角筋間距離を測定します。
TOS症状がない方の平均は10mm前後。
下エコー画像は私自身のISDを計測したものです。
11.7mmあり正常です。
次のエコー画像は当院に通院中の野球選手のISDです。
4.8mm。狭いですね。
【NVBの位置関係評価】
古島先生が鏡視下所見をエコー評価に置き換え、神経血管束(NVB)を3 Typeに分類したものです。
・Parallel type は動脈の横に神経がしっかりと見えているもの
・Oblique type は神経が押され一部しか見えていないもの
・Vertical type は完全に動脈の後ろに追いやられてしまったもの
Verticalになるほど神経血管は圧迫されやすくなり、TOSになりやすい形態をしているということになります。
次図は当院通院中の小学6年生の野球選手です。
神経束は完全に後方へ押しやられ、見事なVertical typeです。
一時、ひどいときにはたったの2球投げただけで腕が痛みと共に痺れ、力が入らなくなりボールが投げられなくなっていました。
現在では神経血管束のスペースや通り道に余裕をもたせる施術を行い、フォームや体の使い方を工夫することで、まだあまり無理はできませんが、通常に投球することが出来るようになっています。
この選手は名古屋スポーツクリニック様とも連携させていただきながら施術をおこなってもおります。
投球時の痛みが中々改善しない場合、このような胸郭出口症候群(TOS)である場合も意外と多いのです。
投球時痛が思ったように改善しないとお悩みの方は、一度ご相談にいらっしゃると良いかもしれません。
橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)
執筆者:院長 山本幸治
執筆者 山本幸治
橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)の整復前エコー画像です。
整復後のエコー画像です。
骨折や脱臼はできるだけ速やかに整復し、骨のアライメントを整えてあげることで、痛みも軽減し、予後も良好となりやすいです。
神経や血管損傷など合併症に充分留意し、可能なものは速やかに愛護的に整復を行ない、病院に対診いたします。
整復前と整復後を並べた画像です。
骨のライン揃いました。
整復後の対診先整形外科病院でのレントゲン写真です。
非常にキレイに整復されており、整復位も安定しているため、このままギプス固定で良いですよ!と言っていただきました。
当院施術の見学
執筆者:院長 山本幸治
執筆者 山本幸治
当院には毎年何名かの同業の先生方や医療系の学生が見学&勉強にいらっしゃいます。
来院されている患者さんに迷惑にならないようにしていただき、何も隠すことはないため自由に見学してもらっています。
今回は病院にお勤めの理学療法士(PT)の先生がいらっしゃいました。
絶えずメモを取り一語一句聞き逃すまいと、非常に勉強熱心さが伝わってきました。
県外からいらっしゃり、早朝より最終の夜遅くまで、ずっと立ちっぱなしで大変だったと思います。
是非とも今後のお仕事に役立てて、1人でも多くの痛みや障害に悩まれる方を救ってあげてくださいね。
お疲れ様でした!
四十肩、五十肩の夜間痛の理由と対策
四十肩、五十肩の代表的な症状の一つに夜間痛があります。
多くの患者さんが訴える症状で、痛みで夜中に目が覚めてしまう、横になってすぐ痛みが強くなり寝られないなどの話もよく聞きます。
しかし、なぜ寝ている間は肩を動かしていないにも関わらず痛みが強くなるか不思議に思ったことはありませんか?
今回はその理由と痛みを軽減させる方法をお伝えします。
そもそも寝られないとどんな影響がある?
四十肩、五十肩の特徴的な症状のひとつに夜間痛があると言いましたが、そもそも寝られないことは痛みが強くなることにつながるのか?という疑問があると思います。
これは寝られないことにより交感神経が優位となります。
交感神経が優位になると体が緊張した状態になり、血管や筋肉が緊張して血行が悪い状態になってしまい痛みが増します。
せっかく体を休める時間なのに痛みで睡眠不足になり、交感神経が優位となることで痛みがさらに強くなるという悪いサイクルになってしまうため、睡眠は必要ということです。
【なぜ安静にしているのに痛くなるの?】
炎症が起きている肩を上に挙げたり、動かせば痛くなるのは当然ですが、安静にして寝ているのに痛みが強くなるのはなぜでしょうか?
これは肩の内圧の上昇が関係しています。
このように仰向けで寝ると肘が下がり、肩は上に突きあげられるような方向に力がかかります。
そうすると肩の圧力が高くなり、ストレスとなって痛みが強くなるということです。
また山本ら(2003)による患側下側臥位、仰臥位、立位で肩峰下関節包圧を計測したデータ(山本宣幸ほか:腱板断裂患者の夜間痛について−アンケート調査ならびに肩峰下滑液包の圧測定−:肩関節,27巻 第2巻,259−262,2003)によると
・第一位 患側下側臥位
・第二位 仰臥位
・第三位 立位
でした。
第一位の患側下側臥位は痛い方を下にして寝るということであり、この姿勢が痛いのは理解できると思います。
しかしその次に痛くなる姿勢が仰臥位、つまり仰向けで寝る姿勢となっています。
いかに寝るときの姿勢や肩のポジションを正しくし、肩の圧力を下げられるかが重要ということです。
『寝るときのポジション』
・肩より肘が高くなっていること
・少し脇の空間をあけること
・手はお腹の上に置かずクッションなどの上に置くこと
このポジションを取ることで肩の内圧が上がることを防ぎ、睡眠がとりやすくなります。
写真を参考に寝るときの腕のポジションに気を付けてくださいね。
四十肩、五十肩の炎症期にやるべきこと
執筆者:
前回は画像診断装置の発達により今までわからなかった肩の痛みを烏口突起炎、上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、腱板炎、石灰沈着性腱板炎など様々な病態に分けて診断できるようになってきたと説明しました。
しかし、それでもなおはっきりとした原因が分からない四十肩、五十肩に悩む人が多くいます。
ほとんどの四十肩、五十肩は炎症期→拘縮期→回復期といった経過を辿り治癒に向かいますが、今回は「炎症期」にやるべきことを説明します。
炎症期に何をすればいい?
肩の痛みで悩んでいると動かしたほうがいいと言われたり、動かさないほうがいいと言われたり…どうしていいのかわからないという声をよく耳にします。
これは病期によって対処法が異なるためであり、状況によりやるべきことが変わるからです。
炎症期のほとんどの方が口にされるのが
・少し動かそうとしただけでも強い痛みがある…
・寝ようとしても痛みが強くて寝れない…
・洗濯物が干せない、高い場所のものが取れない、下着をつけられないなど日常生活で不自由なことが多く、ストレスがたまる…
など
普段は何でもないようなちょっとしたことでも強い痛みが出ると、ストレスから心の余裕もなくなってしまいますよね。
しかし、何もしないより少しでも動かすほうが改善が早くなったり、痛みをコントロールできるということがわかっています。
炎症期に推奨されていること
患者さん自身が肩の状況と痛みを正しく理解すること、そして痛みを伴わない範囲での関節可動域練習や運動療法、家でのセルフケアが効果的と言われています。
何もわからないままだといつ痛みが消えるのか先が見えず、不安ばかりが大きくなることもありますよね。
大切なことは現在の状況を理解して、今後どのように痛みが変化するのか知ること。そして治療とともにできる範囲の運動やストレッチを行うことです。
痛みが強すぎて何もできないという方
肩の痛みが長く続いている方は神経が敏感になることで、わずかな刺激も激痛に感じてしまう状態になっている可能性があります。これを末梢性・中枢性神経感作*といいます。
(*中枢性感作とは、脳や末梢神経が痛みに敏感になっている状態。つまり通常では痛みを感じないような僅かな刺激でも痛みを感じてしまう状態。)
このような状態の方は関節を動かすなんて考えられないと思うかもしれませんが、こんな場合でも運動療法、全身運動が効果的である(EIH)と多く報告されています。
※Exercise-induced-hypoalgesia(EIH)
“運動中または運動後に侵害刺激に対する痛覚閾値・耐性値の増加、または痛覚強度の減少を特徴とし、痛覚感受性が減弱する現象”
(松原貴子:EIHについて:ペインリハビリテーションの観点から.ペインクリニック 38 : 601-608,2017.)
(松原貴子: 運動による疼痛抑制の神経メカニズム.ペインクリニック 35 : 16555-1661,2014.)
またEIHに関して
罹患部と離れた遠隔部での運動においても罹患部の痛覚感受性を低下させることも知られています。
具体的な運動療法としては、肩関節を動かさずに肩の近くの肘や肩甲骨、胸椎から動かし始めます。
肩関節を無理に動かしてしまうと炎症が強くなり、更に神経も過敏になってしまうため必要以上に焦らず状況を見ながら運動療法を行うのです。
更に、肩周囲から遠く離れた場所の運動でも痛覚感受性を低下させることも報告されているため、肩が動かせないような強い炎症期でもウォーキングやエアロバイクなど、患部に影響の少ない場所の運動を行うことで痛みを軽減できる効果があると考えられます。
未だに著効を示す治療法はありませんが今回紹介した方法で痛みを理解してコントロールし、根気よく治療していくことが今できる最善の方法と考えています。
当院では超音波エコーで肩の状態を確認し、手技療法や運動療法に加え、電療、超音波治療、体外衝撃波などを状況に合わせて行い、多角的にアプローチしています。肩の痛みでお悩みの方は一度ご相談ください。
最後に家でできるストレッチをご紹介します。無理のない程度にやってみて下さいね。
四つ這いで手を床につけ肩を安定させます。
手と膝を床につけたまま体を少しずつ前後させ、肩をゆっくり動かすようにします。(可能ならハイハイもおすすめです)
無理に大きく動かさず、痛みの出ない範囲で動いてみてください。
外側型野球肘(離断性骨軟骨炎 OCD) Panner病
執筆者:院長 山本幸治
執筆者 山本幸治
前回まで内側型野球肘の主要な病態をお伝えしましたので、今回は外側型野球肘について。
外側型野球肘というのは、すなわち離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans、以下OCD)のことになります。
OCDは何らかの理由で軟骨下骨への栄養供給が損なわれ、細胞が壊死したものです。
すなわち骨が壊死していくわけですから、事は重大です。壊死をすることによって最終的には母床から剥がれてしまいます。その剥がれて関節内に落下してしまったものが関節遊離体(いわゆる関節ネズミ)になり、疼痛や機能障害を起こすわけです。最終的には手術をしなくてはならなくなってしまうことも多く、選手生命に関わってくる病気です。
野球肘に代表されますが、肘だけに限らず、膝、足首など他の部位にも好発します。
また野球選手だけに限らず、腕をよく使う器械体操やテニス選手などにも多く発生します。
物理的な繰り返される圧縮力(圧迫力)によって引き起こされるとされ、野球肘におけるOCDの場合、“野球肘の成れの果て”なんて表現もされたりしますが、実はOCDの発生は圧縮力の加わるスポーツ選手だけに限った話ではなく、だれにでも起こりうるといわれています。
野球であれば投球制限をしても、無理のかからない投球フォームを指導し取得しても発生するときは発生するのです。すなわち発症自体は遺伝的に一種の病気として発生しており、野球選手など腕を多く使うスポーツ選手は繰り返されるストレスによって悪化していくから問題になっているわけです。
OCDは統計的には100人に1~2人(約2%)程度と言われています。
柏口ら*の少年サッカー選手の肘を調べた研究では、OCDが同様に2%程度見つかったと報告しています。
しかしサッカー選手の場合は、その後、腕を多用するわけではないので、自然と緩解し気が付かないうちに治癒に至り問題にならないわけです。
ですからOCDの一番の治療法は安静(投球中止)ということになるわけです。
またOCDは一種の病気として何の前触れもなく発生するので、検査で早期発見し早期に対応していくことが重要なのです。OCD初期の発見には超音波エコーがレントゲンよりも鋭敏であり、有効であることが分かっています。
また前述の柏口医師は、今までOCDとされてたものに軟骨下骨折も多く混じっており、病態の違いをしっかりと把握することの必要性も説いておられます。
当院でも一か月前に観察したときには何ともなかった子が、一か月後にエコーで遊離体が確認されたなんて子もいました。通常OCDは一か月で遊離するなんてことは考え難く、対診先の整形外科ドクターからも上腕骨小頭の軟骨下骨折との判断をいただいたこともあります。
すなわちこれは障害ではなく外傷になるわけで、治療方針に少なからず違いが出てきます。上腕骨小頭部の障害は全てが全てOCDというわけでもないということですね。
また同様に上腕骨小頭部の障害を呈する病気には、Panner病といったものもあります。
Panner病も上腕骨小頭の無腐性壊死になりますが
、基本的には予後良好です。しかしOCDよりも好発年齢がやや低いことが特徴くらいで、その鑑別は難しいことも多く注意が必要になります。
いずれにしてもOCDとは治療方針も異なってまいり的確に状況を把握することが大切になってきます。
*柏口新二:少年サッカー選手における離断性骨軟骨炎発生率の調査
(平成22年9月日本整形外科スポーツ医学会)
四十肩、五十肩って結局なに?
執筆者:
四十肩、五十肩で悩んでいる方は多いと思います。この世代に発症することが多く、どちらも違いはありません。
また肩関節周囲炎といった呼び方をすることもありますが、あまりピンと来ないので四十肩、五十肩で浸透していますよね。
そして驚くことに、江戸時代からあるのだとか…
別名“長命病”とも言われていたそうです。
(https://www.canva.com/photos/MADarPOGgHA-shoulder-pain/)
当院でも肩の痛みを抱えてご来院される方が多くみえ、軽度な痛みから強い夜間痛、肩を後ろに回したり、全く動かせないような激痛まで程度は様々です。
定義としては
なにかしらの関節内炎症によって肩関節に強い痛みを生じ,次第に肩関節の可動域制限が生じていく後に,疾痛が軽減して拘縮だけが残り,そして拘縮も経過とともに改善していく
(出典:村木孝行. (2016). 肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン. 理学療法学, 43(1), 67–72.)
しかし四十肩、五十肩って何を指しているのかわからないという方も多いのではないでしょうか?
骨・軟骨・靭帯・腱・滑液包や関節包などが老化して、肩の周囲の組織に炎症が起こることが原因と考えられていますが、現在もはっきりとした原因はわからないとされています。
しかし、画像診断が進歩したことで少しずつ痛みの原因が分かってきた部分もあります。
MRI・CT・超音波エコーを使い組織の異常を把握できるようになってきました。
(MRI Shoulder joint Magnetic resonance imaging (MRI) - Canva)
例えば
・烏口突起炎
・上腕二頭筋長頭腱炎
・肩峰下滑液包炎
・腱板炎
・石灰沈着性腱板炎
・肩関節拘縮
など
いままでは詳しく診断できなかったため、ざっくりとこの年代で肩の痛みは四十肩、五十肩だろうとされていましたが、いまではこのような細かい診断名が付くこともあります。
四十肩、五十肩の痛みの経過は大体決まっており、ほとんどがこのような経過を辿ります。
凍結進行期(freezing phase)→凍結期(frozen phase)→解凍期(thawing phase)
そして平均して1~2年で治るとされています。
つまり一人一人の肩の症状や痛みの状況によって、その時にやるべきことと避けるべきことが変わり、病期にあわせた治療や運動療法が必要となります。
次回は痛みの段階によりどんなことをすべきかを書こうと思います。
ブログ・目次
- 腰痛(6)
- 椎間板ヘルニア(4)
- 坐骨神経痛 梨状筋症候群(1)
- 腰部脊柱管狭窄症(3)
- 腰椎分離症(4)
- 変形性股関節症 臼蓋形成不全(1)
- 四十肩・五十肩(8)
- 石灰沈着性腱板炎(1)
- 肩こり 頚肩腕症候群 姿勢不良(1)
- 頚椎症性神経根症(1)
- 野球肩 野球肘(25)
- リトルリーガーズショルダー(1)
- 腱板損傷(2)
- 胸郭出口症候群(TOS) 野球(1)
- ベネット病変(骨棘)、投球障害肩(1)
- 変形性膝関節症(2)
- オスグッド(1)
- シンスプリント(1)
- 肘内障(1)
- 足底腱膜炎(足底筋膜炎)(1)
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)(2)
- ばね指(1)
- めまい メニエール病 良性発作性頭位めまい症(BPPV)(1)
- 橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)(1)
- ジョーンズ骨折(1)
- イズリン病(Iselin、第5中足骨粗面) (1)
- 顎関節脱臼(1)
- 栄養(2)
- 低酸素トレーニング(加圧トレーニング)(2)
- 超音波骨折療法(LIPUS)(2)
- 体外衝撃波(2)
- 立体動態波 ハイボルテージ(1)
- スーパーライザー(2)
- 投球フォーム指導(38)
- パーソナルトレーニング(3)
- コンディショニングスペース(2)
- 酸素カプセル(6)
- トレーナー活動(7)
- 日本超音波骨軟組織学会(JSBM)(25)
- 東海野球傷害研究会(5)
- 健康管理士(3)
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(3)
- 特別施術(5)
- LPST(腰椎・骨盤安定化)プログラム(8)
- 学び(41)
- お役立ち情報(20)
- 野球(12)
- 大学院(6)
- 当院セミナー、勉強会、講師(9)
受付・施術時間 (予約制)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
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午前 | ○ | ○ | - | ○ | ○ | ○ | - |
午後 | ○ | ○ | - | ○ | ○ | ○ | - |
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(土曜、日曜午後は7:00まで)
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