肘の障害
肘の障害
野球肘とは
ボールを投げようとすると,肘関節にどのような力が加わるでしょうか?
肘の内側には引っ張る力が,外側には圧迫する力が働きます。
子供の肘関節は,投球によるストレスが繰り返し加わることにより,内側では筋肉や靭帯の付着している軟骨・骨・靭帯自体が引き裂かれてしまうケガが,外側では関節内の軟骨や骨が壊れてしまうケガが発生します。
これが『野球肘』です。 関節の軟骨や靭帯は,回復力の乏しい組織であるため,時間が経過すると投球をする上だけではなく,日常生活をする上でも不自由な腕になってしまうので,早期発見と適切な施術が必要になります。
10歳前後の小学生(特に投手)から中学生にかけて多く見られ内側型・外側型・後方型がある。
内側型が最も多く見られるが基本的に予後は良好である。
問題となるのは外側型で離断性骨軟骨炎となり病期が進むと骨片が遊離体(関節ネズミ)となり注意が必要です。
画像診断にはエコー・レントゲン・CT・MRIがあるが,最近,早期発見の為にエコーが注目されています。
症状と施術
押した時の痛み(圧痛)・運動時(投球時)の痛み・運動後(投球後)の痛みなどがあります。痛みおよび組織の早期修復に対してレーザー施術・超音波施術・低周波施術などの理学療法と,安静および投球制限(ノースロー)が必要です。
特に当院では骨折の修復を40%短縮すると言われているLIPUS(オステオトロン)を使用し,早期修復を目指します。
また経過観察するとともに,症状を診ながら必要であればフォームチェックをし,再発しないよう痛みの出ない投球方法を指導します。
内側部障害
内側上顆骨化核障害
投球時のアクセラレーション期において,肘関節の内側には強い牽引力と外反力が加わります。
それによって肘の内側の骨の骨化核が剥離(はがれ)骨折してしまったり分離・分節してしまう障害です。最も多い症例のうちの一つです。
内側上顆骨端線離開
投球時のアクセラレーション期において,肘関節の内側には強い牽引力と外反力が加わります。
それによって肘の内側の骨が成長線のところで離開してしまう障害です。
内側側副靭帯損傷
過度に投球動作を繰り返したり,正しく安定したフォームで投げていなかったりすることにより,肘関節には外反ストレスが繰り返しかかります。
その結果,内側側副靭帯の牽引力が作用して,内側側副靭帯の付着部で損傷を起こします。
回内・屈筋群筋膜炎 上腕骨骨膜炎
投げすぎると肘の内側の筋・筋膜に炎症や変性による小さな断裂が生じたり,その筋が付着する骨膜に炎症が起こったりして,肘の内側に痛みが出る障害です。
外側部障害
上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎)
アクセレーション期からリリース期にかけての肘外側部への圧迫力・骨の衝突により発生すると考えられています。
肘外側への過度の外反ストレスにより,肘外側の上腕骨小頭と橈骨頭の繰り返される圧迫力により上腕骨小頭の関節軟骨に壊死を生じ離断してくる病態です。
病期の進行度により・透亮期(初期)・分離期(進行期)・遊離期(終末期)にレントゲン分類される。
外側型(上腕骨小頭障害)は発症初期に適切な施術を受ければ遊離体を形成することなく治癒する可能性が高いが,厄介なのは初期には疼痛を認めないことが多く,気付いた時には進行して手術をせざるを得ない状態になっているという点である。
初期に発見出来れば,そのほとんどが野球の禁止(投球動作以外にもバッティング等,肘に負担のかかる動作の完全なる禁止が必要)により修復可能。早期発見が一番重要である。
後方障害
肘頭骨端線離開
投球動作における上腕三頭筋の収縮の繰り返しにより,肘頭骨端線部分に離開を生じる障害です。
成長期の子供に多く発生します。
肘頭骨端核障害
投球動作で肘頭の上腕三頭筋の付着部に痛みと同じ箇所に圧痛が見られます。
程度を越えた投球の繰り返しによって小さな骨折や分離などが引き起こされます。